先日公開した記事ではジャズミュージシャンの経済状況について触れたが、メジャーミュージシャンのサポートや、レコーディングの演奏を行うスタジオミュージシャンの経済状況も逼迫している。

 スタジオミュージシャンは、スタジオレコーディングやライブのサポート演奏などがメインであり、楽器の実演を伴う業務が大半を占める。
 東京都の小池知事をはじめ、行政機関が3密(密閉空間、密集する場所、密接した会話)を避けるように繰り返し呼びかけるが、ライブハウスやコンサートホール、レコーディングスタジオなど、実演業務が行われる施設は3密であることが必至である。また、多くのメジャーアーティストが外出自粛要請が解除となる5月6日までライブの中止や延期を発表した。そのため、スタジオミュージシャンは当面の間、仕事を失ったのである。

 彼らのほとんどはフリーランスであり、個人事業主である。演奏業務の終了後、請求書のやり取りが行われ、支払いは月末締めの翌月末払いであることが多い。3月中からコロナウイルスの影響が出はじめていたため、収入が激減するのは5月以降となる。(1)

 また、フリーランスのミュージシャンはスケジュールが月によって大きく変動し、収入も不安定なため、基本的に1日あたりの単価が高く設定されている。そのため、公演がキャンセルとなり、補償も無い場合は収入が著しく減少する。 
 スタジオミュージシャンは業務を引き受ける際に、契約書を取りかわさないケースがほとんどであり、口頭でのやり取りや、メール、メッセージアプリでのやり取りも多い。そのため、公演キャンセルに伴うギャランティーの補償について、明記されている文章は無く、全て事業者の判断なっている。

 あるスタジオミュージシャンは、3月中にキャンセルとなった公演についての保証は一切無いと話していた。一方、大きな事務所やイベント事業者が主催するライブでは、ギャランティーの6~7割の補償が支払われると話すミュージシャンもいた。事業者の規模や体力によって対応が様々である。

 ライブハウスやイベント事業者への助成金を求める声が上がっているが、ミュージシャンへの補償を支払っていない事業者が、政府に対して助成を求めることは道理が通っているのだろうか。
 事業者への助成金が出された際には、ミュージシャンへ還元されることを切に願う。

小林篤茂

(1)https://tellthetruth.jp/2020/04/07/おいてきぼりのミュージシャン/