ミュージシャンが政治スタンスを表明してこなかったツケが回ってきた。

 政治に対する関心がない人、またはその集団をノンポリ(ノンポリティカルの略)と呼ぶ。そのようなノンポリミュージシャンが音楽業界の多数を占めているのが日本である。特に音楽やミュージシャンを商品として扱うメジャーフィールドでは、ミュージシャンの政治的発言を嫌っていた。政治的な発言は、ミュージシャンにネガティブな印象を与えるからだ。

 2011年の東日本大震災の際にも「音楽に政治を持ち込むな」という論争が巻き起こった。この時、Youtubeで反原発動画を公開した斉藤和義は様々な方面から批判を浴びた。音楽に政治を持ち込むことについて否定的ないきものがかりの水野良樹は、当時自身のツイッターで斉藤和義を批判していた。斉藤和義に共感する声がある一方で、水野良樹の意見を支持する声も少なくなかった。

 しかし、いまは状況が大きく異なる。音楽を続けるためには、政治に無関心ではいられない。そのようなノンポリ思想でいることは、もはや不可能な領域に突入したのだ。政治的な発言をしないことが “クール” といった価値観は、真っ先に淘汰されるだろう。

 所属事務所のアミューズ、そして星野源本人はどのように対応するのだろうか。何かしらのスタンスを示さなければ、コロナウイルスが収まった後の活動、もしくは現政権が倒れた後の音楽活動に、大きな影響を及ぼしかねない。

 ミュージシャンはファンのために無料で公開した動画を政治利用されても、黙って見てることしかできないのだろうか。

小林篤茂